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長期脱炭素電源オークションとは?蓄電池投資への影響を制度から整理する

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長期脱炭素電源オークションとは?蓄電池投資への影響を制度から整理する

「長期の固定的な収入」を制度がつくる仕組み

系統用蓄電池の収益は、卸電力市場・需給調整市場・容量市場という複数の市場から得る対価の組み合わせで構成されます(別記事「系統用蓄電池は何で収益を得るのか」参照)。これらの市場価格は年度ごと・時間帯ごとに変動するため、事業の収入は本質的に変動的です。この変動性が大規模な脱炭素電源への新規投資を難しくしているという課題認識のもとで整備されたのが、長期脱炭素電源オークションです。電力広域的運営推進機関(OCCTO)が運営する容量市場の枠組みの中に位置づけられた入札制度で、2023年度に初回オークションが実施されました。

制度の基本的な仕組み

なぜ「長期固定」の仕組みが必要とされたのか

蓄電池や水素・アンモニアといった脱炭素電源は、初期投資が大きい一方で、投資回収の原資となる市場価格が将来どう推移するかを確定できません。市場価格の見通しだけを頼りに数十年単位の投資判断を行うのは難しく、結果として必要な供給力・調整力への投資が進まないおそれがある——この課題認識が制度の出発点とされています。オークションで競争させた上で、落札者には長期の固定的な収入を約束することで、価格競争と投資の予見性を両立させようとする設計です。

対象となる電源

脱炭素化に資する電源の新設・リプレース等が対象とされ、蓄電池(系統用蓄電池)や揚水発電といった調整力を担う設備も対象電源に含まれています。対象電源の区分・要件・募集量はオークションの回次ごとに見直されるため、最新の募集要綱をOCCTOの公表情報で確認する必要があります。

落札すると何が得られるか

落札した電源は、原則20年間という長期にわたり、固定的な容量収入(供給力を提供できる状態への対価)を受け取れる設計とされています。通常の容量市場のオークション(別記事「容量市場とは何か」参照)が単年度分の供給力を確保する仕組みであるのに対し、長期脱炭素電源オークションは投資回収の予見性を長期で確保する点に特徴があります。

収益の還付という特徴的なルール

落札電源が卸電力市場や需給調整市場など他の市場で得た収益は、その大部分を還付する(市場に戻す)ルールが設けられています。つまり「固定的な容量収入を長期で得られる代わりに、市場での上振れ益の大半は手元に残らない」という設計です。市場価格が高騰しても収益が大きく伸びない一方、市場価格が低迷しても容量収入は維持されるという、リスクとリターンを両側で圧縮した収益特性になります。

長期脱炭素電源オークションの仕組み: 入札から長期容量収入と市場収益還付までの流れ
長期脱炭素電源オークションの仕組み: 入札から長期容量収入と市場収益還付までの流れ

蓄電池投資にとって何を意味するか

通常の容量市場との違いを整理する

| 観点 | 容量市場(メインオークション) | 長期脱炭素電源オークション | |---|---|---| | 対象 | 既設を含む供給力全般 | 脱炭素電源の新設・リプレース等 | | 収入の期間 | 単年度 | 原則20年間の長期 | | 他市場収益の扱い | 基本的に事業者に帰属 | 大部分を還付 | | 制度の狙い | 将来の供給力の確保 | 脱炭素電源への新規投資の促進 |

いずれもOCCTOが運営する容量市場の枠組みに属しますが、性格は大きく異なります。単年度の対価か、長期の固定収入かという違いは、資金調達の組み立て方(借入期間・金利条件の交渉材料)にも影響するとされます。

事業モデルの選択肢が分かれる

長期脱炭素電源オークションを前提とする蓄電池事業は、市場価格の変動に賭けるのではなく、長期の固定的な収入を軸に投資回収を組み立てるモデルになります。一方、オークションを経由しない蓄電池事業は、市場価格の変動をそのまま収益機会(および下振れリスク)として引き受けるモデルです。同じ「系統用蓄電池」でも、収益特性がまったく異なる2つの事業類型が併存することになり、投資検討の際は案件がどちらの類型かをまず確認する必要があります。

個人投資家はどう関わることになるか

長期脱炭素電源オークションに応札するのは発電事業者等であり、個人投資家が直接入札に参加する制度ではありません。個人投資家がこの制度に関わるのは、落札した(または応札を予定する)事業者が組成する案件に、区画購入や出資といった形で参加する場合が中心になると考えられます。この場合、制度上の権利義務を負うのは事業者であり、投資家が受け取る条件は事業者との契約で決まります。制度の恩恵(長期の固定収入)がどのような形で投資家に引き渡されるのか、事業者側のペナルティ負担が投資家に転嫁されないかなど、事業スキームの構造(別記事「系統用蓄電池投資の事業スキームはどう違うか」参照)と契約内容の両方を確認する必要があります。

落札は保証されていない

オークションである以上、応札しても落札できるとは限らず、落札価格・落札容量は回次ごとの競争環境で変わります。募集量に対して応札が集中すれば落札のハードルは上がり、事業計画が「落札できた場合」を前提に組まれている案件では、落札できなかった場合に事業がどうなるのかという分岐の確認が欠かせません。また、落札後も建設・運転開始の遅延や要件不充足にはペナルティ等の定めがあり、長期の固定収入は無条件に得られるものではありません。固定的な収入という言葉の印象だけで「安全な投資」と受け取るのではなく、収入が固定される条件と、その条件を満たせなかった場合の帰結までを一体で理解することが重要です。制度の詳細要件は改定され得るため、判断時点の募集要綱を一次情報で確認することが不可欠です。

投資判断で確認すべき点

  • 案件の収益類型: 検討中の案件が長期脱炭素電源オークションの落札を前提とするか、市場収益型か
  • 落札の確定状況: 「応札予定」と「落札済み」では事業の確度がまったく異なる。落札結果はOCCTOが公表する情報で確認できる
  • 還付ルールの影響: 市場収益の還付を織り込んだ収支計画になっているか。上振れ益を期待した計画は制度設計と矛盾しないか
  • ペナルティ条件: 運転開始遅延・要件不充足時の減額・ペナルティが収支に与える影響
  • 契約期間とのずれ: 容量収入の期間・設備の保証期間・借入期間の整合性
  • 制度改定リスク: 回次ごとの要件見直しが将来の追加投資・リプレース判断に与える影響

まとめ

長期脱炭素電源オークションは、長期の固定的な容量収入と市場収益の還付をセットにすることで、脱炭素電源への大規模投資の予見性を高めようとする制度です。蓄電池投資の観点では、市場収益型とは収益特性が根本的に異なる事業類型を生み出すものであり、案件検討ではどちらの類型かの確認が出発点になります。制度の詳細は改定され得るため、OCCTOの公表する募集要綱・約定結果を必ず一次情報で確認してください。蓄電池投資の全体像は系統用蓄電池投資ガイドで整理しています。

出典・参考資料

執筆者

Wealth HUB 編集部

運営: 株式会社ファンベスト

系統用蓄電池・不動産などの実事業を持つ株式会社ファンベストが運営する、資産運用・投資情報メディアの編集部です。制度・数値は一次情報を出典として明記し、特定の金融商品の売買を推奨しない編集方針で記事を制作しています。

本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品・投資案件の売買を推奨し、または投資勧誘を行うものではありません。記事内で言及する制度・数値・利回り等は一般的な解説であり、将来の成果や収益を保証するものではありません。投資に関する最終的な判断は、読者ご自身の責任において行っていただきますようお願いいたします。

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株式会社ファンベストは、系統用蓄電池をはじめとする再生可能エネルギーの実事業を運営しています。事業者としての知見をもとに、系統用蓄電池案件についての個別のご相談に応じます。

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