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需給調整市場とは?調整力の対価はどう決まるかを商品区分から整理

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需給調整市場とは?調整力の対価はどう決まるかを商品区分から整理

需給調整市場とは何か

需給調整市場は、電力の需要と供給を常に一致させるために必要な「調整力」を、一般送配電事業者が調達するための市場です。市場に関する情報は、一般送配電事業者10社で構成される送配電網協議会や電力広域的運営推進機関(OCCTO)のサイトで公表されています。

電気は大量に貯めておくことが難しく、需要と供給が一致しないと周波数が乱れ、最悪の場合は停電につながります。太陽光や風力など天候で出力が変わる電源が増えるほど、このズレを瞬時に埋める調整力の重要性が増すと整理されており、応答の速い系統用蓄電池は調整力の有力な担い手の一つとして位置づけられています。

系統用蓄電池の収益全体の中での位置づけは、別記事「系統用蓄電池は何で収益を得るのか」をご覧ください。

「調整力」とは何を提供することか

調整力とは、一般送配電事業者からの指令に応じて、出力を上げ下げ(蓄電池であれば充電・放電の切り替え)できる能力のことです。卸電力市場(JEPX)で売買されるのが「電気そのもの(kWh)」であるのに対し、需給調整市場で取引されるのは「指令に応じて動ける能力(ΔkW)」である点が本質的な違いです。

イメージとしては、卸電力市場が「商品の売買」だとすれば、需給調整市場は「いつでも駆けつけられる待機要員の確保」に近い性質を持ちます。発電計画と実際の需給の間には、天候の変化や需要の予測誤差によって必ずズレが生じます。そのズレを埋めるために、一般送配電事業者はあらかじめ調整力を確保しておき、必要になった瞬間に指令を出して充放電・出力調整を行わせるという構造です。

なお、需給調整市場は2021年度に取引が始まった比較的新しい市場で、対象となる商品は段階的に拡大されてきました。市場としての歴史が浅いぶん、価格水準や参加ルールは今後も変化し得ることを前提に見る必要があります。

商品区分の概要 — 応動の速さで分かれる

需給調整市場では、調整力が応動の速さや持続時間などの性能に応じて複数の商品に区分されています。具体的には、最も速い応動が求められる「一次調整力」から、「二次調整力①」「二次調整力②」「三次調整力①」「三次調整力②」まで、段階的な商品区分が設けられています。

  • 速い区分ほど高い技術要件: 短時間で正確に応動する能力が求められ、参加できる設備が限られます
  • 遅い区分は幅広い設備が参加: 火力発電の出力調整やデマンドレスポンスなども担い手になります
  • 蓄電池は速い区分に強み: 充放電の切り替えが速い蓄電池は、応動の速い商品区分にも対応しやすい特性があるとされています

各商品の具体的な要件(応動時間・継続時間・最低容量など)は制度見直しで変わり得るため、検討時点の最新要件を送配電網協議会等の一次情報で確認する必要があります。

需給調整市場の商品区分の考え方(応動の速さによる区分)
需給調整市場の商品区分の考え方(応動の速さによる区分)

対価はどう決まるか — 2段階の対価構造

需給調整市場の対価は、大きく2つの要素で構成されると整理されています。

  1. 容量(ΔkW)への対価: 「指令に応じて動ける状態で待機していること」への対価です。事業者が応札し、落札した容量に対して支払われます
  2. 電力量(kWh)への対価: 実際に指令を受けて充放電した電力量に応じて精算される対価です

つまり、待機していること自体に対価が生じ、実際に動いた分は別途精算される「2階建て」の構造です。落札価格は入札の競争状況によって日々変動するため、どの程度の収益になるかは市場動向に大きく依存します。また、指令に正しく応動できなかった場合には、対価の減額等のペナルティが生じ得ます。

この構造は、容量市場の「供給できる状態への対価」と発想が似ていますが、時間軸が異なります。容量市場が年単位の供給力を扱うのに対し、需給調整市場は日々の需給運用に必要な調整力を扱う市場です。3つの市場の違いを対比すると次のようになります。

| 市場 | 取引されるもの | 時間軸 | |---|---|---| | 卸電力市場 | 電気そのもの(kWh) | 30分単位の時間帯ごと | | 需給調整市場 | 指令に応じて動ける能力(ΔkW) | 日々の需給運用 | | 容量市場 | 将来の供給力(kW) | 年度単位 |

蓄電池はどう参加するか

系統用蓄電池が需給調整市場に参加する場合、実務上は次のような形態が一般的とされています。

  • アグリゲーター経由での参加: 市場への入札・指令対応・計量などの実務を、専門事業者(アグリゲーター)に委託する形態。区画型の蓄電池投資では、投資家自身が市場と直接やり取りするのではなく、運用事業者が一括して市場参加するスキームが多くみられます
  • 複数市場の使い分け: 需給調整市場だけでなく、卸電力市場でのアービトラージ容量市場への参加を組み合わせ、時間帯や相場環境によって収益源を切り替える運用が想定されます

どの市場にどの程度振り向けるかという運用方針は事業者の戦略・システムに依存し、投資家からは見えにくい部分です。だからこそ、運用体制の確認(別記事「蓄電池のO&M体制はどう確認するか」参照)が重要になります。

また、需給調整市場への参加には、指令を受けて自動で応動する制御システムや、応動実績を計測・報告する体制など、市場ごとに定められた技術要件を満たす必要があります。設備そのものの性能だけでなく、それを市場要件に適合するかたちで運用できる体制がセットで揃ってはじめて、需給調整市場は収益源になり得ます。

投資判断で確認すべき点

需給調整市場の約定結果などの情報は、送配電網協議会等のサイトで公表されています。販売資料に「需給調整市場でこれだけの収益が見込める」という説明があった場合、その前提が公表情報と整合しているかを確かめられる、ということです。そのうえで、需給調整市場からの収益を含む蓄電池投資を検討する際は、次の点を確認しておきたいところです。

  • 収益想定の内訳: 事業計画のうち需給調整市場由来の収益がどの程度を占めるか。ΔkW対価とkWh対価のどちらを想定しているか
  • 想定価格の根拠: 過去の約定結果をどの期間・どのエリアで参照しているか。将来も同水準が続く前提になっていないか(市場価格は参加者の増加等で変動します)
  • 参加要件への適合: 対象設備が想定する商品区分の要件(応動性能・計量体制等)を満たすか。要件変更時の対応方針
  • 運用者の実績: 市場参加を担うアグリゲーター・運用事業者の実績と、指令に応動できなかった場合のペナルティ負担の所在
  • 劣化との関係: 頻繁な充放電が蓄電池の劣化に与える影響と、保証条件との整合

まとめ

需給調整市場は、電力系統の安定に不可欠な「調整力」を取引する市場であり、応答の速い系統用蓄電池にとって収益源の一つとなり得ます。対価は待機への対価(ΔkW)と実働への対価(kWh)の2階建てで、水準は入札の競争状況により変動します。制度・要件は見直しが続いているため、事業計画の前提を送配電網協議会やOCCTOの一次情報と突き合わせて確認することが重要です。基本用語は用語集も参考にしてください。

出典・参考資料

執筆者

Wealth HUB 編集部

運営: 株式会社ファンベスト

系統用蓄電池・不動産などの実事業を持つ株式会社ファンベストが運営する、資産運用・投資情報メディアの編集部です。制度・数値は一次情報を出典として明記し、特定の金融商品の売買を推奨しない編集方針で記事を制作しています。

本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品・投資案件の売買を推奨し、または投資勧誘を行うものではありません。記事内で言及する制度・数値・利回り等は一般的な解説であり、将来の成果や収益を保証するものではありません。投資に関する最終的な判断は、読者ご自身の責任において行っていただきますようお願いいたします。

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