卒FIT後の売電はどうなるか。相対契約・FIP移行・自家消費という出口の選択肢を整理する
卒FITとは何か。買取期間の終了は「売電の終了」ではない
FIT(固定価格買取制度)には買取期間が定められており、住宅用(10kW未満)は原則10年、事業用(10kW以上)は原則20年です。この期間が満了した状態は一般に「卒FIT」と呼ばれます(用語の整理は用語集「卒FIT」を参照してください)。
重要なのは、卒FITは「固定価格での買取が終わる」ことであって、「売電そのものができなくなる」ことではないという点です。発電設備は買取期間終了後も物理的には発電を続けられるため、その電力をどう扱うかという出口の設計が、事業期間全体の収支を左右します。本記事では、卒FIT後の主な選択肢を制度事実にもとづいて整理します。特定の選択肢を推奨するものではなく、どれが適するかは案件の条件により異なります。
卒FIT後の主な選択肢
選択肢1: 小売電気事業者等との相対契約で売電を続ける
もっとも分かりやすい選択肢は、小売電気事業者やアグリゲーター等と個別に契約(相対契約)を結び、売電を続けることです。買取単価は契約相手との合意で決まるため、FIT期間中の固定価格と比べて水準が変わるのが一般的です。契約期間・単価の見直し条件・解約条件は契約ごとに異なるため、複数の買取事業者の条件を比較することが検討の出発点になります。
比較の際は、単価の高さだけでなく契約全体の条件を見る必要があります。表示単価が高くても、短期契約で更新時に見直される条件であれば、長期の収支計画には織り込みにくくなります。
- 買取単価は市場環境や契約相手により異なり、固定とは限らない
- 契約期間中の単価見直し条項や中途解約条件の確認が必要
- 買取事業者自体の事業継続性も確認の対象になる
選択肢2: FIP制度や市場売電への移行
事業用の太陽光では、FIP(フィード・イン・プレミアム制度)への移行や、アグリゲーターを通じた卸電力市場での売電という選択肢もあります。FIPは市場価格にプレミアムを上乗せする仕組みで、市場価格の変動を収入が受けやすくなる点がFITと異なります(制度の違いは別記事「FIT/FIP制度の基礎」を参照してください)。市場価格に連動する収入構造は、価格が高い時間帯に売る工夫の余地がある一方、価格低迷時の収入減少リスクも伴います。適用可否や手続きは制度の定めによるため、資源エネルギー庁の最新情報の確認が前提になります。
選択肢3: 自家消費への転換
発電した電力を売らずに自分の施設で使う「自家消費」への転換も選択肢の一つです。売電収入の代わりに、電力会社から購入する電力量を減らす効果を狙うモデルで、電気料金の水準が収支に影響します。夜間や発電量の少ない時間帯に電力を使う施設では、蓄電池を併設して昼間の余剰を貯める構成が検討されることもあります。ただし蓄電池の追加投資が必要になるため、投資回収の前提を含めた試算が欠かせません。
選択肢を比較する際の視点
| 視点 | 相対契約での売電 | FIP・市場売電 | 自家消費 | | --- | --- | --- | --- | | 収入・効果の源泉 | 契約単価での売電収入 | 市場価格連動の売電収入 | 購入電力の削減 | | 価格変動の影響 | 契約条件による | 受けやすい | 電気料金水準による | | 追加投資 | 原則不要 | 体制構築が必要な場合あり | 配線変更・蓄電池等が必要な場合あり | | 主な確認事項 | 契約条件・相手方の信用力 | 制度要件・運用体制 | 電力使用実態・追加投資額 |
いずれの選択肢でも、収入や削減効果の水準は電力市場の状況・契約条件・施設の電力使用実態によって大きく異なります。特定の水準を前提にした断定的な収支予測はできず、複数シナリオでの試算が必要です。
また、選択肢は排他的なものではありません。たとえば余剰分を相対契約で売電しつつ一部を自家消費に回す、といった組み合わせも施設の条件によっては検討対象になります。組み合わせるほど契約・設備構成は複雑になるため、シンプルな構成から比較を始めるのが実務的です。
検討はいつから始めるべきか
卒FITへの対応は、買取期間の満了が近づいてから慌てて決めるものではありません。検討のタイミングという観点では、次の点を押さえておく必要があります。
- 満了時期の把握が出発点: 自分の設備(あるいは検討中の中古案件)の買取期間がいつ満了するのかを、認定情報・契約書面で正確に把握する。満了時期を誤認したまま収支計画を立てると、前提そのものが崩れる
- 切り替えには手続きの時間がかかる: 相対契約の締結、FIP等への移行手続、自家消費への設備変更のいずれも、相手方との交渉・申請・工事といったリードタイムを伴う。満了直前に検討を始めると、選択肢を比較する時間が取れず、提示された条件をそのまま受け入れることになりやすい
- 満了後に何もしないとどうなるかを確認する: 契約や地域の取り扱いによっては、無契約状態での扱いが不利になる場合がある。空白期間を作らないことが基本になる
- 市場環境は変化する: 買取条件や制度は検討時点と満了時点で変わり得るため、早めに全体像を把握しつつ、最終決定は満了の一定期間前に最新条件で行う、という二段構えが現実的
投資判断で確認すべき点
これから太陽光発電投資を検討する場合も、稼働中の設備を保有している場合も、卒FITに関しては次の点の確認が重要です。
- 残存FIT期間: 買取期間の残りが何年あるか。中古案件では残存期間が収支計算の土台になる(中古案件の見方は別記事「中古太陽光発電所のチェックポイント」を参照してください)
- 卒FIT後を含めた収支計画か: 販売資料の利回りがFIT期間のみで計算されているのか、卒FIT後の想定を含むのか。含む場合、その単価前提に根拠があるか
- 設備の残存性能: 卒FIT後も発電を続ける前提なら、パネルの劣化状況やパワコンの交換計画が現実的か(交換費用の考え方は別記事「パワコンの寿命と交換費用」を参照してください)
- 契約の切り替え自由度: 現在の売電契約や土地契約が、卒FIT後の選択肢の変更を妨げる条件になっていないか
- 制度の最新動向: FIP等の制度は見直しの対象であり、検討時点の一次情報(資源エネルギー庁の公表資料)で要件を確認する
なお、卒FIT後の収入を高めに見積もった販売資料は、利回りを実態より良く見せる典型的なパターンでもあります。卒FIT後の単価前提が現在のFIT単価に近い水準で置かれているような試算は、その根拠を必ず確認してください。
まとめ
卒FITはFITによる固定価格買取の終了であり、売電や設備活用の終了ではありません。相対契約での売電継続、FIP・市場売電への移行、自家消費への転換という複数の出口があり、それぞれ収入構造・価格変動の影響・追加投資の要否が異なります。どの選択肢が適するかは案件と施設の条件次第であり、一律の正解はありません。投資判断の段階から「FIT期間が終わった後にどうするか」を織り込み、残存期間・設備状態・契約条件を一次情報と実際の書面で確認することが、長期の収支を考えるうえでの前提になります。
出典・参考資料
- 経済産業省 資源エネルギー庁「なっとく!再生可能エネルギー」FIT制度・買取期間終了後に関する解説経済産業省 資源エネルギー庁 ・ 確認日: 2026-07-05
- 経済産業省 資源エネルギー庁「固定価格買取制度・FIP制度」経済産業省 資源エネルギー庁 ・ 確認日: 2026-07-05
執筆者
Wealth HUB 編集部
運営: 株式会社ファンベスト
系統用蓄電池・不動産などの実事業を持つ株式会社ファンベストが運営する、資産運用・投資情報メディアの編集部です。制度・数値は一次情報を出典として明記し、特定の金融商品の売買を推奨しない編集方針で記事を制作しています。
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品・投資案件の売買を推奨し、または投資勧誘を行うものではありません。記事内で言及する制度・数値・利回り等は一般的な解説であり、将来の成果や収益を保証するものではありません。投資に関する最終的な判断は、読者ご自身の責任において行っていただきますようお願いいたします。

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