Wealth HUB
再エネ制度実務者向け

系統増強と接続検討の流れ。時間とコストはどこで発生するのか

公開日: 更新日: 読了目安: 約6
系統増強と接続検討の流れ。時間とコストはどこで発生するのか

系統増強とは何か

系統増強とは、送電線・変電所などの電力系統設備を新設・増設し、電力を送れる容量を拡大する工事を指します。再エネ発電設備や系統用蓄電池の接続申込が集中したエリアでは、既存の系統設備だけでは受け入れられず、接続の前提として系統増強が必要になる場合があります。

系統連系の基本的な手続きは別記事「系統連系で失敗しないために」で解説したとおりですが、本記事では「増強が必要になった場合に、どこで時間とコストが発生するのか」に焦点を絞って整理します。系統増強の要否は事業計画の期間と初期費用を大きく左右するため、案件検討の早い段階で見通しを持つことが重要です。

接続検討から増強工事完了までの流れ

電力広域的運営推進機関(OCCTO)は、系統アクセスに関する手続きのルールを整理・公表しています。増強を伴う接続の一般的な流れは次のとおりです。

  1. 事前相談(任意): 接続予定地点周辺の系統状況について、一般送配電事業者等に概略を照会する
  2. 接続検討の申込: 設備の仕様・接続希望地点を提示し、接続可否・必要な対策(増強工事の要否)・概算費用の検討を依頼する
  3. 接続検討の回答: 系統側で必要となる工事の内容、概算工事費、想定工期などが回答される
  4. 接続契約の申込・締結: 回答内容を踏まえて契約を申し込み、工事費負担金の金額等を確定させる
  5. 増強工事の実施: 一般送配電事業者が系統側の工事を実施し、完了後に連系開始となる
系統増強を伴う接続の流れと時間・コストの発生ポイント: 事前相談→接続検討申込(検討料)→回答→接続契約(工事費負担金の確定)→増強工事(長期化リスク)→連系開始
系統増強を伴う接続の流れと時間・コストの発生ポイント: 事前相談→接続検討申込(検討料)→回答→接続契約(工事費負担金の確定)→増強工事(長期化リスク)→連系開始

時間はどこで発生するか

接続検討の期間

接続検討には申込から回答まで一定の期間を要します。検討期間の標準的な取り扱いはOCCTOのルールで整理されていますが、案件が集中しているエリアや上位系統への影響検討が必要なケースでは、回答までの期間が延びることがあります。

増強工事の期間

最も長期化しやすいのが増強工事そのものです。送電線の新設・変電所の増設といった大規模な工事は、用地確保・設計・施工に長い期間を要し、規模によっては年単位の工期となることもあります。接続検討の回答で示される想定工期を確認し、事業開始時期(収益発生の開始時期)がその工期に依存することを計画に織り込む必要があります。

手戻りによる再検討

接続検討の回答を受けた後に設備の容量・仕様・接続地点を変更すると、検討のやり直しが必要になる場合があります。事業計画の詰めが甘いまま接続検討を申し込むと、変更のたびに検討期間が積み上がる手戻りが生じるため、申込前に設備計画をどこまで固めるかの見極めも、期間管理の一部です。

連系希望時期とのギャップ

増強工事の完了時期が自らの連系希望時期より後になる場合、完成した発電・蓄電設備が待機状態になる期間が生じ得ます。資金調達のスケジュール(借入の返済開始時期等)と連系開始時期のギャップは、事業初期の資金繰りに直接影響します。売買契約や請負契約を結ぶ順序によっては、連系開始前から支払いだけが先行する構図になり得るため、契約・資金・連系の3つのスケジュールを1枚の時間軸で整理して確認することが実務上は有効です。

コストはどこで発生するか

接続検討料

接続検討の申込には検討料が発生するのが一般的です。金額は設備規模・検討内容によって異なるため、申込前に一般送配電事業者の公表資料で確認します。

工事費負担金

系統側の増強工事費のうち接続する事業者が負担する部分が工事負担金です。負担額は接続地点の系統状況と工事規模によって案件ごとに大きく異なり、接続検討の回答で概算が、接続契約で確定額が示されます。概算から確定までの間に金額が変動する可能性がある点にも注意が必要です。

一般負担と特定負担という考え方

系統増強費用は、すべてを接続事業者が負担するわけではなく、系統全体の便益につながる部分は託送料金等を原資として広く負担し(一般負担)、特定の事業者のための部分をその事業者が負担する(特定負担)という整理がなされています。自案件の負担がどのような整理に基づいて算定されているかは、接続検討の回答内容で確認できます。なお、発電側にも系統費用の一部を求める発電側課金の仕組みも導入されており、接続後の継続的な負担と併せて理解しておく必要があります。

個別対応から「プッシュ型」へという流れ

従来の系統増強は、接続の申込を受けてから必要な対策を検討する「プル型」が基本でしたが、再エネの大量導入を見据えて、国・OCCTOが将来の電源立地を想定して広域的な系統整備を計画的に進める「プッシュ型」の考え方が導入されています。OCCTOは広域連系系統の長期方針・整備計画を策定・公表しており、地域間連系線などの増強が計画的に進められています。

投資家の視点では、この流れは次の2つの意味を持ちます。第一に、広域的な増強が進めば、将来的に系統制約が緩和されるエリアが出てくる可能性があること。第二に、増強費用の回収の仕組み(賦課金方式や託送料金を通じた負担)が整備され、発電側課金のように発電事業者の継続的な負担にも関わってくることです。検討中の案件のエリアで大きな系統整備計画が動いているかどうかは、OCCTOの公表資料で確認できます。

増強を避ける・軽減する選択肢

系統増強には時間とコストがかかるため、既存系統の空き容量を柔軟に活用するノンファーム型接続のように、混雑時の出力制御を受け入れる代わりに増強を待たずに接続する仕組みも整備されています。この場合、初期の時間・コストは軽減される一方で、運転開始後の出力制御リスク(エリア別の確認手順は別記事「出力制御の地域差はどう調べる?」参照)を引き受けることになります。どちらが有利かは案件条件によって異なり、一概には判断できません。

投資判断で確認すべき点

  1. 接続検討の回答書の内容: 増強工事の要否、概算工事費負担金、想定工期が回答書でどう示されているかを直接確認したか(事業者の口頭説明だけで済ませていないか)
  2. 工事費負担金の確定状況: 提示されている金額が概算か確定かを区別し、確定前であれば増額時の取り扱いを確認したか
  3. 連系開始時期と資金計画の整合: 増強工事の工期を前提とした場合に、収益発生開始と借入返済等のスケジュールが整合しているか
  4. 代替接続形態との比較: ノンファーム型接続等を選択した場合の出力制御リスクと、増強を待つ場合の時間コストを比較検討したか
  5. 遅延時の契約上の取り扱い: 系統側の工事遅延で連系が遅れた場合の売買契約・請負契約上の取り扱いを確認したか

まとめ

系統増強を伴う接続では、接続検討・増強工事の各段階で時間が、検討料・工事費負担金という形でコストが発生します。いずれも案件ごとの変動幅が大きく、事業計画の成立性を左右するため、接続検討の回答書という一次資料を自分の目で確認することが出発点になります。OCCTOが公表する系統アクセスのルール・系統情報と、一般送配電事業者からの回答内容を突き合わせ、時間とコストの両面から事業計画の妥当性を検証してください。

出典・参考資料

執筆者

Wealth HUB 編集部

運営: 株式会社ファンベスト

系統用蓄電池・不動産などの実事業を持つ株式会社ファンベストが運営する、資産運用・投資情報メディアの編集部です。制度・数値は一次情報を出典として明記し、特定の金融商品の売買を推奨しない編集方針で記事を制作しています。

本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品・投資案件の売買を推奨し、または投資勧誘を行うものではありません。記事内で言及する制度・数値・利回り等は一般的な解説であり、将来の成果や収益を保証するものではありません。投資に関する最終的な判断は、読者ご自身の責任において行っていただきますようお願いいたします。

再エネ投資について個別にご相談されたい方へ

株式会社ファンベストは、系統用蓄電池をはじめとする再生可能エネルギーの実事業を運営しています。事業者としての知見をもとに、個別のご相談に応じます。

関連記事